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■新しい年度のはじめに

会長:後藤雅宣

 春の気配が整うのかと案ずるほどの長く厳しい冬、全国に及ぶ局所的な突風、記録的な寒暖の差と、このところの不順な天候には翻弄されます。なんとか新緑の青葉繁れる季節を迎えられたところですが、会員の皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。ご健勝のこととお喜び申し上げます。
 今期会長を拝命いたしました千葉大学の後藤雅宣です。微力ながらも、会員の皆様のお力をお借りしながら、学会運営に寄与できますよう専心する所存です。どうかご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 さて、関西から産声を上げた研究会が、田中健三初代会長のもとに学会として再出発して、すでに20余年という歳月が流れました。2010年には、会長職を務められた穂積穀重先生、藤本修三先生のご尽力により、日本学術会議協力研究団体の指定を受けることができました。関西発の研究会が、公的に「学会」として認定された瞬間でした。
 いうまでもなく、この学会の特筆すべき点は、造形に関わるあらゆるジャンルを認め合い、「基礎」というテーマのもとに、さまざまな発表の機会や情報交換の場を創作しようとしてきた点にあります。美術やデザインにわたる広範な造形領域を引き受け、古典から現代までをも包含しています。それによる研究結果の集積を、財産として受け継いできました。学者や研究者、また教育者ばかりでなく、画家や彫刻家、工芸家までが参集する希有な研究組織であり、この点が他に類を見ない誇るべき特色といえます。
 そもそも自然科学と対極にある表現の世界を、自然科学的手法で解き明かそうとするところには、きわめて困難な作業を伴うことが想像できますが、この学会の特色を生かしつつ、また形骸化した業績主義的運営に陥ることなく、互いを認め合い、刺激し合い、可能性を育みあうような空気を大切にしたいものです。
 他方、学会なる組織に対する国や社会の目は、ここに来て年々変化を見せています。組織としての社会的責任や貢献を、より厳しい目で精査していく機運が高まってきました。日本学術会議協力研究団体となった現在、これにも答えていかなければなりません。こうした中で学会運営を考える時、三つの要点が見えてきます。質と、規模と、外部社会との関係性です。この三者が互いに連関し、責任ある学会の姿を形成するものと捉えています。これまでの実績を継承しつつ、今期はこれらの向上を目指して、来期につなげていければと思っております。
 今年の研究発表大会は、本学会史上初めて北海道に上陸します。会員の皆様の積極的なご参加を、ぜひともお願い申し上げます。

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