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■2007秋季韓国基礎造形学会国際学術大会 報告
村松 俊夫

 韓国基礎造形学会は、春と秋の2回学会を開催しております。とくに秋の大会は、国際学会として中国・台湾・日本から講演者や作家を招聘してきました。今回穂積穀重会長からの要請を受け、日本基礎造形学会の代表として11月3日に行われた2007秋季韓国基礎造形学会国際学術大会に参加し、あわせて国際交流作品展に出品してまいりましたのでご報告いたします。 
 大会前日の2日午後、羽田の国際線ターミナルからおよそ2時間の空路をソウルの金浦空港に向け出発しました。出品する作品は、DVDの映象と60センチ立方の立体2点です。作品は金属製で、簡単に破損するものでもなかったので、キャリアーに取り付け航空手荷物として運びました。
 会場の国立忠北(チュンブク)大学校がある清洲(チョンジュ)市は、韓国の中で唯一海のない忠清北道(チュンチョンブクド)の中心都市で、ソウルから2時間ほどのところにあります。いくつもの橋のライトアップで有名な漢江(ハンガン)沿いの夜景を横目で見ながら、出迎えの車でソウルから一路清洲市に向かいました。50qごとにしかインターチェンジがないという高速道路に乗り、山の間を縫うように走って行きます。夜のことでもあり、職場のある山梨方面へ中央自動車道を移動しているような錯覚を覚えました。
 その夜は、大学構内のゲストハウスに宿泊させていただきました。清洲市は内陸性の気候で寒暖の差が激しく、たまたま薄着だったこともあってか戸外はかなり寒く感じられました。しかしながら当のゲストハウスは、トイレ・シャワーつきの2部屋ある高層マンションのような建物で、断熱もしっかりしているうえに床暖房もあり、まったく寒さを感じませんでした。
 翌11月3日には、10時から学会開会式と基調講演が3件行われました。基調講演では、中国の江西景徳鎮陶藝学院の金文偉(ジンウェンウェイ)先生の発表が印象に残りました。長い伝統を誇る陶磁器の産地「景徳鎮」ですが、最近は学生に対する教育においても、近代的な合理性を追求する模索が行われているようです。かつての具象的形態のイメージからは想像もつかない前衛的な作品が、次々と作り出されている様子を多くのスライドとともに紹介されました。
 昼食を挟んで、午後1時50分からは作品展開幕式とギャラリートーク、3時40分からは論文発表が行われました。作品展には250点を超える平面・立体作品が並び、大会の熱気を感じます。招待作品のスペースには中国、台湾、日本から各1名、韓国から2名が出品し、多くの参加者を得てギャラリートークが行われました。私は日本語で自作品を解説したのですが、筑波大学博士課程に韓国から留学中の学会員芝嘉一(シガイル)さんが気を利かせてくださり、私のHP中の文章を事前に韓国語に翻訳してくれていたのでスムーズに進行することができました。心より感謝申し上げます。
 午後6時近くまで行われた論文発表では61件の報告がありました。私も1つのセッションに参加しましたが、それぞれの発表ごとに活発な質疑応答や熱心な議論が交わされます。このような国際学会を毎年開いている韓国学会員の「基礎造形」に対する意気込みを改めて認識させられた場でもありました。
 大会後のレセプションは、昼食と同様に大学構内の食堂で行われました。プレミアムイベントとして「くじ引き」などもありましたが、総じてあまり大げさなパーティーではなく、気張らず普段着で実施することがこのような会議を毎年コンスタントに継続していく秘訣かなとも感じました。
 大会では、芝(シ)さんをはじめ、現地で教鞭をとっている日本人の百瀬先生や、日本に留学経験のある開催校の沈(シン)先生、台湾の許(ヒュ)先生たちが進んで会話の仲立ちをしてくださり、言葉に困ることはありませんでした。また、何よりも朴(パク)会長を始めとする韓国基礎造形学会実行委員の先生方の行き届いた対応が心に残っています。
 欧米への渡航経験は数カ所ありますが、アジア訪問は今回の韓国が初めてでした。3日にも満たないわずかな期間でしたが、様々なことを得て帰国できたように思います。一番大きな収穫は、もっとも身近な東アジアの国々に多くの知人を得たことでしょう。
 今後も日本をはじめとする各国の基礎造形学会がさらなる発展を続けていくことと、機会あるごとに韓国・中国・台湾の学会員との交流を持つことが出来れば……という願いを深くしながら金浦空港をあとにしました。


国際作品展開幕式:テープカット


清洲市忠北大学校(大会会場入口)                 大会開会式:韓国基礎造形学会朴会長


国際作品展:招待作家スペース                     国際作品展:ギャラリートーク
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