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■アジア基礎造形学会上海大会報告
  昨年の10月に開催されたアジア基礎造形学会上海大会について、アジア連合担当の有田理事、岩田理事からご報告をいただいております。有田理事からは上海大会の概略について、岩田理事からは、アジア基礎造形学会への参加についてです。
 またその他、多数の学生を引率された後藤理事からご報告をいただいております。



■アジア基礎造形学会上海大会に参加して

アジア連合担当:有田 信夫

 2005年10月22日(土曜)に開催された、アジア基礎造形連合学会上海大会の概略について、ご報告いたします。
 今回の学会テーマは「基礎造形と教育」でした。午前9時から開会式が、上海第二工業大学情報センター会議場で行われ、同大学の党書記・李進先生をはじめ大学挙げて歓迎していただきました。
 参加した学会は、日本基礎造形学会はじめ韓国基礎造形学会、台湾基礎造形学会、そして中国国内からは天津基礎造形学会、広州基礎造形学会、南京基礎造形学会、上海基礎造形学会で、約400人の大学教員、学生の参加がありました。
 開会式に引き続き、10時より12時まで上海大会執行委員会会長である呉静芳先生の司会で、中国清華大学の楊永善教授による基調講演「基礎造形的専業特徴」が行われました。
 このなかで楊教授が、中国伝統の陶磁器を例にして説明された11の造形法は、陶磁器の新たな造形発想法で、分かりやすく、示唆に富むものでした。
 午後からは各国代表の論文発表と作品鑑賞が行われました。日本代表は筑波大学大学院生 山根千佳子さんで、論文「芸術鑑賞における感性のはたらきと脳活動」が発表されました。 芸術作品の鑑賞領域である感性を科学的にアプローチする試みで、新しい基礎造形分野を切り開く意味で大変注目されました。
 また、上海実行委員会が企画した岡山県立大・児玉先生の愛知万博デモンストレーション「赤富士」も、美しい光の造形表現ということで、参加者の関心を集めました。
 作品展示は約500点でした。このなかで目を引いたのは、南京にある学院の学生作品の鉛筆によるシュールな表現でした。基礎造形分野の中でデッサン力が重視されていることがわかります。このようなデッサン力があるから、殷、唐時代から今日まで、青銅器、陶器の造形性がひときわ目立つのだと思いました。
 日本からの作品では、岩田先生の紙による折の造形「Folding the ball」、後藤先生の平面作品「One-Line」が参加者の話題を集めていました。
 学長主催の懇親会および閉会式は上海新浦江城芸術センターで華やかに友好的に執り行われました。
 最後になりましたが、この国際学会も故朝倉先生をはじめ諸先輩方の国際舞台での活躍とご尽力があったからこそ、こうして盛大に開催できたと思いました。改めて感謝いたします。中国と日本の国柄が違うことや、私が初めて担当したことで、不行き届きの点がありました。参加された先生方には大変ご迷惑をおかけしました。
 次回2年後の開催国は、日本です。再会を約束して終了しました。

 
2005アジア基礎造形学会会場:歓迎のバナー(左)と上海第二工業大学国際会議場(右)

 
口頭発表:日本代表の山根千佳子さん 展示ホールにおける作品展


閉幕パーティー:民族楽器の演奏


■アジア基礎造形学会上海大会の参加メモから

アジア連合担当:岩田 綾彬

 若気の至り、ビデオシステムが普及した頃のある学会で、「論文や作品をビデオ収録しテープを交換すれば学会大会はない。」と発言したら、「若僧何を言う。酒を酌み交わして論議するところに大会の意義がある。」と一喝されたことを思い出す。どんな大会も参加する事に意義がある。
 今回、10月21日(金)福岡空港発の便が2時間遅れ、着いた上海浦東国際空港は日本では考えられない大勢の人、入国手続きも戸惑り、現地旅行ガイドに会ったのが現地時間午後6:00頃。有田氏と共にホテルにチェックインを済ませ、8:00までの作品搬入会場上海杉達学院にタクシーを走らせた。上海でも浦東地区は日本企業の工場が多くある工業地域で、日が暮れると広い道路の外灯以外にあまり灯はない。上海杉達学院に着くと守衛から広いキャンパスの奥の奥、教員宿舎に案内された。そこで我々は日本語学科の丸山英勝先生を紹介された。先生から今回の上海大会の主催、会場共に、上海第2工業大学に移行した経緯のあらましを聞くことができた。丸山先生はわざわざ我々を上海第2工業大学へとタクシーで案内してくれた。今回大会会長の呉先生、現地で外人教授として今大会の指揮をとる松尾氏、両名共この大会準備中、上海杉達学院から上海第2工業大学に籍を移していた。したがって作品搬入場所から、大会スケジュールまでもが大きく変動する大会でもあった。国内の日本基礎造形学会で緻密なスケジュール通り運ぶ大会に慣れている我々以外、日本の参加メンバーはいささか面喰らった。しかし主催者が、がむしゃらに大会を挙行するガッツと、日本以外の国々から応募出展した作品数に驚かされた。
 直接造形学会とは関係ないが、丸山先生との出合いや、参加しないと理解できない事柄、御国事情が察知できる。今後国際交流は頻繁になる。若い会員の方には自己の研究をグローバルな視野から見つめ直すチャンスとして、アジア基礎造形連合学会の積極的な参加を勧める。

閉幕式、呉静芳会長(中央)


■学生達と参加して

千葉大学:後藤 雅宣

 千葉大学から学部生、大学院生あわせて総勢16名で参加いたしました。目的はそれぞれの作品出品と研究発表見学、そして各国の方々、学生さん達との交流にありました。
 作品展はその出品数に圧倒され、中国各学会、韓国、台湾の学会の活力にあらためて驚かされるところとなりました。研究発表は、各学会から一名の代表者によって行われましたが、発表一番手だった日本基礎造形学会代表の山根千佳子さんによる英語での発表は、実に周到に準備された優れたもので、学生達もおおいに感化された様子でした。懇親パーティーで各国の研究者の方々や大学生と交流できたことは、学生達にとっても貴重な経験になったことと実感いたしました。帰国後も、私に内緒で情報交換等をしているようです。次の時代を作るための良き出会いであってほしいと、ほほえましく感じています。
 大会の内容および進行、会場の細部にいたる諸準備、懇親パーティーのコーディネート、いずれをとっても完璧に組み立てられたもので、大会実行委員会と会場校上海第二工業大学関係者の方々の御労苦に敬服するばかりでした。上海は、なるほど上海でした。
 
左:夜遅くまで作品展示作業をする上海第2工業大学学生  右:上海第2工業大学の学生寮


上海の学生との交流会

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