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■日本基礎造形学会第15回熊本大会を終えて

熊本大会実行委員会事務局長 星加民雄

日本基礎造形学会第15回熊本大会が、盛況のうちに無事に終了したことをご報告いたします。今回の大会は、基礎造形学会の原点に戻り、「本学会の魅力とは何であるか」をみんなで確かめる機会になればと考え、従来の小品の持ち込みによる作品発表を180センチ以内の大作による展示、しかも一週間の展示による対外的なアピールに重点を置いた例年にない企画内容で進めて参りました。以下に具体的な内容についてご報告いたします。

 「2004日本基礎造形学会熊本・国際交流展」と題する作品展を皮切りに、第15回熊本大会が8月21日、22,23日と行われました。大会参加者は、一般会員43名、学生会員6名、台湾から3名、韓国から約40名、途中参加者4名、学生体験参加者4名の約100名の参加者がありました。初日は、熊本色を出すため、最終日のエキスカーションの見学内容にも合わせて、邪馬台国の跡地とも一部の人には言われている山鹿の装飾古墳について、中村幸史郎先生をお迎えしてご講演をいただきました。この装飾古墳については、偶然にも、亡き朝倉直巳先生の著書「ジオメトリックアート入門」の冒頭のページに、古代の幾何学的構成表現の事例としてカラーで掲載されていました。生きておられたら、さぞお喜びになったことと思います。

基調講演の後、学内を見学していただき、展覧会場となっている熊本県立美術館分館へと向かいました。展覧会は、すでに平成16年8月17日からオープンし、22日を最終日とする一週間を展示期間としておりました。日本側からの出品者38名、韓国側からの出品者52名による規模の大きい展覧会となりました。来場者数は、初日の新聞報道の影響もあり、一日平均90人前後の入場者数で、6日間の入場者数が522人でした。手業と質感に重点を置いた作品や、インタラクティブなハイテク作品など、一人一人の力作がジャンルごとに交差し、基礎造形の本質が垣間見られるようなバランスのとれた展示空間になったと思います。また韓国からは、52人のパネル作品による作品参加と、家族も含めて約40名もの方が来日されました。2000人規模に成長している韓国の基礎造形学会のエネルギーとパワーを肌で実感されられる思いでした。初日には、日本、韓国双方の作家が互いに入り交じりながらのギャラリートークがあり、展覧会場は熱気にあふれておりました。

ギャラリートークの後、展示会場に隣接するKKRホテル熊本で懇親会を行いました。山鹿灯籠の披露をはじめ、ライトアップされた熊本城と生演奏を背景に、展覧会の余韻に更けりながら楽しいひとときを過ごしました。勢いは止まらず、二次会、三次会と熊本の夜の街をすっかり満喫したようです。

翌日は、9時20分から3会場に分かれて21本の口頭発表が行われました。本大会では、基礎造形教育の分野に7本、造形発想、調査分析、提案の分野に7本、デザイン、構成、造形表現の分野に7本と、それぞれの分野ごとに分けた形で口頭発表を行うことができました。例年になく発表本数が多かったのも、本学会への関心の高まりだけでなく、その背景には、論文編集委員の後藤雅宣先生のご尽力により、充実した12本による論文集が発行されたことも大きな要因であると思います。

午後からは、稲垣行一郎先生による会長自らの「レイモンド・ローウィーと戦後の日本のデザイン」と題する講演が行われました。レイモンド・ローウィーと接触のあった日本人デザイナーの唯一の生き残り証人として、鳩のマークでおなじみのピースのデザインからコーラやナビスコのパッケージデザインなど、意外にも身近なところに存在する彼が手がけたデザインについて、生の体験を通した数々のエピソードを加えての講演内容は、日本のデザインの原点を振り返る意味において、様々な視点でデザインを考えさせられる良い機会を与えていただきました。

3日間の大会の最後は、初日の基調講演の内容の実体験として、山鹿の装飾古墳の見学と阿蘇の見学をパックにしたエキスカーションを企画しました。予想以上に関心が高く26人の参加者がありました。非常に暑い日中の見学ではありましたが、ユーモラスで楽しい先生の話はとても印象的でした。阿蘇見学の際に少し雨に当たりましたが、雲の合間から火口を見ることもできました。非常に運動量の多い大会でした。

一部の方からは、連日連夜の熊本に盛り上がり、コミュニケーションを深められたと聞いております。基礎造形学会の魅力は、力強い作品の発表を土台として、エネルギッシュな教育とコミュニケーションにあるのではないかと、この夏の思い出を振り返りながら実感しているところです。

概要集の作成、作品展示、口頭発表会場の設営など、本大会の準備にご尽力下さいました実行委員の方々、および学生諸君に対して、この場をお借りして御礼申し上げます。また本大会を実施するにあたって、海外からの参加者による大会ということで、熊本国際コンベンション協会から様々な方面で補助を頂きましたことをご報告いたします。

作品発表会場風景:熊本県立美術館・分館4F 作品発表会場風景:熊本県立美術館・分館4F

会場風景:講堂 口頭発表風景 ギャラリートーク:韓国 ギャラリートーク:日本
会場風景:講堂 口頭発表風景 ギャラリートーク:韓国 ギャラリートーク:日本
懇親会風景

懇親会風景:山鹿灯籠 懇親会風景:シンセサイザーと民族楽器による演奏 閉会式
懇親会風景 懇親会風景:山鹿灯籠 懇親会風景:シンセサイザーと
民族楽器による演奏
閉会式
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